霖のあと

詩置場

名前の主

繰り返す夏と秋と冬と春の中で 繰り返す日の出と日の入りの中で 記憶の糸を解いて 名前を呼んだ 信仰の声色は色褪せ 乾いた習慣を抱いた 名前を呼ぶたび 名前の主の不在を知る 傷跡は触ると治らないから ずっと残しておきたければ 絶えず触っているがよい 記…

白髪の少年

昨日の夢の中に出てきた白髪の少年にもう一度会いたい。髪は癖がなくさらさらで、瞳が明るいブラウンで、細身で、肌が白かった。理知的で、彼の話しぶりとその内容から、頭がよく教養もあることをうかがわせた。白いシャツがよく似合っていた。中性的で、ヘ…

近況20220910

東京を離れて実家にいる。無職である。 前職場に記入を頼んだ傷病手当金の書類が返ってくるのと任意継続保険の保険証が来るのを待っている。もらった診断書には「うつ病」と書いてあって笑ってしまった。本当かよ。 ※以下、希死/自殺念慮の描写があります ==…

青の温度

若い星は青い 温度が高いと青く見えるのだ いつだったか理科で習った 青空の温度は高い 街を 道ゆくヒトを まっさおの光で灼く かげおくりをしてみたら 影まで青で灼かれたので アスファルトの青いシミになった 灼かれたからだは 灼かれたこころは 空と同じ…

とけちるよる

あたためられた まち ほてった からだに ここちよい すこし つよい かぜ そらは くもが あつい こんなよる なら やみにとけて きえゆくのも いつもより やさしいかもしれない さくらの はなびら の ようには ちれなくて はなが ちりかけている さくらの きの…